ライター斎藤博之の仕事

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斎藤博之は、祭りや民俗芸能・食文化・温泉文化・地域の社会史・地域づくりについて執筆しています。
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<饗え>こそは、社会を再生する力である

 <饗え>こそは、社会を再生する力である。この言葉は、わたしのホームページにも、メールの署名にも掲げているので、どのような意味かと問われることが多い。お金で売り買いするのではない、贈り物をしあう交感。その最たるものが祭りのなかに必ずある「饗え」なのだ。「饗え」を行なうことで、人間は互いを支えあうコミュニティを築いてきた。地域社会のなかにまだ深く息づいているその力こそが、経済成長だけを目指して破綻したこんにちの社会を再生する。そういうことをわたしは主張しつづけてきた。

 「饗え」ということばじたいは、わたしが発明したわけではなく、日本語にもともとあった。これに柳田國男が、少し変わった意味を与えたのである。柳田國男は、祭りの折、村の辻に集まって座り込み、宴をしている人びとを見て、言った。「饗えこそが、祭りのほんとうの目的である。村があるから祭りを行なうのではなく、祭りを行なうのでそのたびに村が生まれるのだ」と。

 「饗え」ということばに意味をもたせるということは、柳田に倣ってみたに過ぎない。ただ、柳田が「饗え」に注目したことは多くの民俗学者から忘れられていたので、イリイチやモースと結びつけて新しい息吹を与えようとしただけなのだ。

 贈与交換の社会を日本の民俗の中に見出そうとしたのも、わたしが初めてではない。その主要な部分を、わたしは学生のころ、指導教官であった山崎カヲルに教わった。農山漁村の祭りや芸能を取材するようになって、恩師に教わった思想にもう一度立ち返ることになった。

 あおもりNPOサポートセンターが『季刊シンポジオン』を創刊したとき、編集長であったわたしが「饗え」について纏めた文章があるので、ここに再掲しておく。最近、わたしが柳田のなかから発掘し、経済人類学の文脈のなかに位置付けなおした「饗え」という概念を語っている人びとがいるのを知った。わたしの思い付きを広めてくれることじたいは嬉しいことだが、「饗え」ということばにどのような社会思想を担わせようとしているのか、忘れて欲しくないと思うのである。

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| 斎藤 博之 | [饗えの世界] | 15:24 | trackbacks(0) | comments(3) |


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