ライター斎藤博之の仕事

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恐山はなぜ霊場なのか(あとがき)
 恐山と言えば口寄せするイタコのイメージを思い浮かべて、「怖い」場所だと思い込む向きが、一般にはあるらしい。多くの人が死者と向き合いに来る場所だからといって、しかし、恐山は決して怖くて恐ろしい場所ではない。
 人にとって、恐山とは懐かしい場所、自分の心のなかにある懐かしさと向き合うことの出来る場所なのだった。
sequel
 恐山を詣でる人びとにとって、死者は思い出を取り戻したい懐かしい存在である。死者が安らかに旅立てるようにと賽の河原で草鞋を供え、樹木に手拭いを結んで、賽銭を投げる。地蔵の前に、亡き人の衣裳や靴を手向ける。極楽浜に花を供えて拝む。そしてイタコの口を借りて語る懐かしい人のことばを聴き、泪する。そこには、畏れも憎しみもない。
 降ろして欲しいと頼む側か、降ろされる死者か、そのどちらかに憎しみを感じた場合、イタコは口寄せをすることは出来ないと言う。じっさい、死者とのあいだに何かわだかまりがあっても、年月を経てそれを乗り越え、いまはお互いを受け入れることが出来ると思うようになったとき、人は恐山にやってくるのである。
 あるイタコが言った。「恐山に来ると、懐かしい気持ちになるんです」。死者を懐かしむ暖かな気持ち。その気持ちに囲まれて、イタコもまた懐かしさで充たされる。ある意味で、恐山には亡くなった方も懐かしい一員であるコミュニティ(家族・友だち・村)が出現する。恐山が霊場であるのは、そのコミュニティが恐山でなければ見えないからであろう。
 普段は感ずることのない不可視の協働態。それと向き合うのが、恐山という場所なのである。

 最後に、恐山菩提寺の院代・南直哉さんが書いた文章を引いて、この稿をおくことにする。
――以前、「人は死ねばゴミになる」と言った人がいました。死体をただのモノだと考えれば、それは確かに生ゴミと変わりません。ですが、彼は、亡くなった自分の親や妻を生ゴミとして思い出すのでしょうか。あるいは、幽霊が出たといって大騒ぎする人は、肉親を幽霊として思い出すのでしょうか。違うでしょう。思い出すのは、間違いなく、親兄弟や夫、妻、子供、まさしくその人です。死者はゴミでも幽霊でもなく、その人自身であり、人の想いの中に確かに存在します。
 恐山の岩場のあちこちに積み上げられた石の中には、文字の書いてあるものがあります。多くが人の名前や戒名なのですが、あるとき、こう書いてある石を見ました。
「もう一度会いたい」
 この気持ちの中に死者はいる。恐山は、それが純粋に、なんら飾ることなく表れるところなのです。――
恐山あれこれ日記
| 斎藤 博之 | [祭りと芸能]恐山 | 12:44 | trackbacks(1) | comments(1) |
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雨の霊場恐山、ホラーな旅
沖合いで船が真っ二つに折れたり、500人以上が避難勧告で、大変な目にあっている時に、ねえねのたっての願いで、東北青森の恐山へ行ってきた。
| ノルウェー暮らし・イン・ジャパン | 2006/10/11 12:29 AM |
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確かに、もしがあったら、もう一度会いたい。会って話がしたい。もう一度抱きしめたい。

| タイムマシン | 2006/09/16 1:45 PM |










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