ライター斎藤博之の仕事

このウェブログは、フリーランス・ルポライター斎藤博之が地域限定の新聞・雑誌または非売品の媒体などに執筆した文章を、広くお読みいただくために、公開することを目的にしています。
斎藤博之は、祭りや民俗芸能・食文化・温泉文化・地域の社会史・地域づくりについて執筆しています。
<< 森とともに暮らす(3)糠部の「荒墾起こし」(あらきおこし) | main | 森とともに暮らす(5)大豆と麦の役割 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

sequel
| スポンサードリンク | - | | - | - |
森とともに暮らす(4)「荒墾起こし」(あらきおこし)の作物

 昭和十年代に山口弥一郎が聴き取った、青森県三戸郡名久井村(旧名川町、現在の南部町)の水澤集落の焼畑(この土地の言葉で言えば「荒墾起し」)について書いている。弥一郎の記述に沿って、何を作付していたのか、観ていくことにしよう。

 この集落では、「荒墾(あらき)を起こ」した土地に、まず大豆(まめ)を植える。豆植えは、「荒墾起し」と同時に行なった。男性が「荒墾を起す」と、女性が「土地を打ち」、そのすぐあとを別の女性が豆を植えていく。だから、「荒墾起し」と「豆植え」は、ひとつながりの作業なのだ。土が乾かないうちに植え終わるために、こうするらしい。

 ところで、この畝だが、「横には作らない」。よくある段々畑なら山の斜面に水平に畝を立てていくわけだが、ここでは傾斜に沿って縦に作っていく。横だと、雨で畝が流れてしまうからだ。根株があれば、これを除けて曲るので、くねくねと蛇行する。「荒墾起し」ならではの、独特な山の耕作風景になるのだと言う。

 肥料は、一切与えない。また、始めに「起こす」だけで、二年目以降も耕したりはしない。鋤で「きつかえし」するだけである。木の根から芽が増えるために、二〜三度草刈りをする。肥料を与えず、耕さず、僅かに草取りをする程度で、作物は育つ。それがなぜかは、少し後で考えることにしよう。

 ともかく、初めは大豆と決まっている。五月の「荒墾起し」のときに撒き、九月に根ごと引き抜いて収穫する。このあと、翌(あく)る年の五月まで休はませ、八十八夜が過ぎれば、耕さずに粟を播く。やはり肥料は与えず、草取りも二〜三回と少ない。九月から十月にかけて、荒墾鋤で「きりかえし」、麦を蒔く。

 麦は三年目の六月に刈るが、そのまえの五月に大豆を植える。大豆を収穫したあとは休ませ、四年目の五月は稗を植える。籾殻と堆肥と石灰と灰を少し混ぜて撒く。十月に収穫すれば、この年も休ませる。五年目は七月下旬に蕎麦を蒔く。十月上旬、蕎麦を収穫すれば、「そらす」。山に返すのだ。四年目に稗を作らず、蕎麦を撒いて「そらす」こともある。これをまとめてみよう。


* この文章は、『毎日新聞』青森県版の連載に、若干の修正を加えたものです。

sequel

(一年目五月)
    荒墾起し
    大豆植え


(一年目九月)
    大豆収穫


(二年目五月)
    粟を播く


(二年目十月)
    粟収穫
(二年目十月)
    きりかえし
    麦蒔き


(三年目五月)
    大豆植え


(三年目六月)
    麦刈り


(三年目十月)
    大豆収穫


(四年目五月)
    稗蒔き


(四年目十月)
    稗収穫


(五年目七月)
    蕎麦蒔き


(五年目十月)
    蕎麦収穫


 そらせば、すぐに松林になる。木を伐採したあとは、荒墾を起こしたほうが、森に帰りやすい。だから山持ちは、むらびとに貸して荒墾を起こさせる。四十年程で、木は伐採するまでに育つ。


(追記)


* 同じ南部地方の「荒墾起こし」でも、地域ごとに、焼き方も作物も異にする。新聞への連載を書きながら、焼畑を復活した八戸市南郷で、50年前まで行なわれていた「荒墾起こし」について聴き取り調査を行なった。その内容は、わたしが南部町福地で聴き取ったこととも、山口弥一郎が南部町名川で調べたこととも、違いがある。このことは、もっと後の回で触れることになるであろう。

| 斎藤 博之 | [地域の社会史]焼畑 | 16:13 | trackbacks(0) | comments(0) |
スポンサーサイト
sequel
| スポンサードリンク | - | 16:13 | - | - |
trackback
http://hsaitoh.jugem.jp/trackback/112
comments










+ CONTENTS of THIS WEBLOG
+ PROFILE of SAITOH
+ OTHER WEBSITE written by SAITOH
+ SAITOH'S DIARY

(1)
斎藤博之のTwitter
斎藤博之のTwitter

    follow me on Twitter

    (2)
    ライター斎藤博之の取材日記
    ライター斎藤博之の取材日記
    (ライター斎藤博之が日々取材で出会った食べ物や祭り・風景を紹介する日記。
     Twitter開設以前に作っていたもので、現在は更新していません)

    + FORUM
    ライター斎藤博之のフォーラム (記事内容に関連した討論や、質問を受け付ける掲示板)
    + MESSAGE FORM
    + COPYRIGHTS
    著作権は、斎藤博之にあります。文章の引用は自由ですが、著作権法の定めるところに従ってください。ウェブ上で引用する際も、出典を明示したうえで、トラックバックするか、著者に連絡してください。当然のことながら、著作権を侵害していると認められるものについては、法的な対抗手段をとることがあります。
    + selected entries
    + recent trackback
    + recent comments
    • 恐山信仰とイタコについてのQ&A
      斎藤 博之 (03/27)
    • 恐山信仰とイタコについてのQ&A
      田中 修 (03/17)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      Botox (12/26)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      高橋靖司 (07/17)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      タコ (06/12)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      KAZU (06/01)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/22)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      ana (05/22)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/21)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/21)
    + archives
    + LINKS

    雁屋哲の美味しんぼ日記
    (雁屋哲さんの公式ホームページです)

    美味しんぼ塾ストーリーブログ
    (『美味しんぼ』全巻のあらすじを検索)

    企画集団ぷりずむ
    (雑誌にラーメン特集などを執筆しました)

    グラフ青森
    (雑誌に民俗芸能・地酒などの連載をしました)

    まるごと青森
    (青森県の観光担当職員たちで作るブログです)

    恐山あれこれ日記
    (恐山菩提寺の院代・南さんの日記です)

    山の楽校「焼き畑日記」
    (八戸市南郷区で焼畑を復活しました)

    トキワ養鶏
    (耕畜連携の循環型農業に取り組んでいます)

    レストラン山崎
    (弘前のスローフードの仲間です)

    洋望荘
    (八戸の自然食・スローライフの宿です)

    仙台ラーメン金太郎
    (コンセプトと食材を担当しました)

    仙台屋
    (食材と地酒を集めました)

    深浦の食べ物屋セーリング
    (深浦の正直な食べ物屋さんです)

    青森県のラーメン・旅の宿と温泉
    (T.KENさんのホームページ)

    あおもりラーメン協会
    (あおもりラーメン協会の公式サイト)

    新井由己の仕事帖
    (地域のおでんやハンバーガーなどについて
     食文化として研究しておられます)

    わ的には 「北の国」のチョット南から
    (青森などを歴史も交えて探訪する
     ぴかりんさんのカナリ楽しいページです)

    大川平の荒馬
    (「大川平の荒馬」のホームページです)

    べんべのけやぐ
    (「大川平の荒馬」のメンバーです)

    じっくり・ゆっくり・2
    (「大川平の荒馬」のひろさんです)

    我、旅の求道者也
    (「大川平の荒馬」で知り合いました)

    下田ゆうじの津軽お祭道中
    (懇意にしている鳥井野獅子踊りの若手後継者、
     下田ゆうじさんが津軽の民俗文化を語る)

    小竹勇生山の瞽女宿
    (津軽三味線と越後瞽女を取材しました)

    津軽の侫武多
    (斎藤の作ったネブタ分布データを共有)

    阿部かなえの二胡のページ
    (北東北初の二胡の教室を開いた方です)

    憩いの森メーリングリスト
    (東北の魅力に触れるメーリングリスト)

    くぼた屋ウェブログ
    (岩手県滝沢村とゲームについての話題)

    土徳の世界
    (映像作家・青原さとしさんの公式サイト)

    藝州かやぶき紀行
    (広島の萱葺き職人を追うドキュメント)

    よたよたあひる's HOMEPAGE
    (ちょっとオタクな友人です)


    にほんブログ村
    このウェブログは、「にほんブログ村」に参加しています。

    + RSS
    + RECOMMEND
    美味しんぼ 108 (ビッグ コミックス)
    美味しんぼ 108 (ビッグ コミックス) (JUGEMレビュー »)
    雁屋 哲,花咲 アキラ
    「美味しんぼ」が、東日本大震災の被災地のうち、八戸(青森県)から石巻(宮城県)までの三陸地方を訪ねた。津波は、あらゆるものを流し去ってしまったけれど、清らかな海を護ろうとしていた重茂(岩手県宮古市)や唐桑(宮城県気仙沼市)には、生き物も還ってきた。陸前高田(岩手県)の醤油屋さんは、市民ファンドの援けも得て、新たな一歩を踏み出そうとしている。まっとうな食べ物を作っていた生産者たちは、どのように復興に取り組もうとしているのか。豊かな自然と、温かな絆をもったこの東北に、ほんとうの幸せがあったのではないか。わたくし斎藤博之が案内します。
    + RECOMMEND
    美味しんぼ 100 (100) (ビッグコミックス)
    美味しんぼ 100 (100) (ビッグコミックス) (JUGEMレビュー »)
    雁屋 哲
    わたくし斎藤博之が案内人として登場する『美味しんぼ』の「日本全県味巡り 青森県編」。三方を海に囲まれ、ブナやヒバの森に抱かれた青森県は、海と山の豊かな恵みを受けているばかりではなく、醗酵・粉食・天日干し・寒干しなど、食べ物を保存し・しかも美味しくいただく知恵を、幾百年の年月をかけて蓄積してきた。また、北前船で伝わった文化と北方の民俗が交叉し、旧い日本の食文化の基層を留めてもいる。
    + RECOMMEND
    日常生活のなかの禅―修行のすすめ
    日常生活のなかの禅―修行のすすめ (JUGEMレビュー »)
    南 直哉
    恐山菩提寺の院代・南直哉師は、曹洞宗大本山永平寺で長く修行され、曹洞宗を代表する論僧である。
    この著作は、「私」という存在の根拠への問いから始まり、他者との関係のなかに「生」を見出し、もう一度自己を再構築するための「禅」を説く。
    大乗仏教の根本思想を、恐山の禅僧が語る。
    + RECOMMEND
    「問い」から始まる仏教―「私」を探る自己との対話
    「問い」から始まる仏教―「私」を探る自己との対話 (JUGEMレビュー »)
    南 直哉
    恐山菩提寺の院代・南直哉師は、曹洞宗大本山永平寺で長く修行され、曹洞宗を代表する論僧である。
    この著作は、「私」という存在の根拠への問いから始まり、他者との関係のなかに「生」を見出し、もう一度自己を再構築するための「禅」を説く。
    大乗仏教の根本思想を、恐山の禅僧が語る。


    + sponsored links