ライター斎藤博之の仕事

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青森県の円空仏(4の1)松前街道〜油川浄満寺

 円空仏は本堂の内陣の左脇に祀られている。黒光りしているのは、つい最近まで自由に触れることが出来たからで、津軽半島の円空仏に共通する特徴である。津軽では、躰に患っているところがあれば、仏像に触ると治ると、広く信じられてきた。
 津軽地方の円空仏は観音菩薩坐像が多いが、浄満寺の円空仏は釈迦如来坐像だ。鉈で大胆に削っていることや、仏が微笑んで見えることなど、円空らしい特徴が現れている。

浄満寺の円空仏

 円空仏の拝観には事前申し込みが必要
(浄土宗金台山紫雲院浄満寺 017-788-1844)

 円空仏のある浄満寺には、油川の歴史を辿る文化財も多い。

かのどやま(観音堂山)

●森山弥七郎供養碑
 浄満寺境内を「かのどやま」(観音堂山)と呼ぶ。ここに、青森湊を開いた奉行・森山弥七郎を顕彰するため、寛文6年(1666年)に寺野内に建立された碑がある。昭和23年にこの「かのどやま」に遷されるまで野木和公園にあり、もともと昭和10年(1935)までは飛行場が建設された場所に立っていた。

森山弥七郎顕彰碑

 油川に伝わる伝承では、弥七郎は油川湊を存続するよう尽力した。三代目弥七郎が油川湊目付を務めていたことから、このような伝説が生まれたのかもしれない。油川湊は米や酒を松前に船積みし、大坂や越前から木綿・砂糖・紙などの荷が降ろされた。

「元祖森山弥七郎」

●伝奥瀬氏五輪塔

伝奥瀬氏墓

 浄満寺本堂の裏手に小高い茂みがあり、ここに天明飢饉の供養塔と並んで、いくつかの五輪塔がある。寺に伝わるところでは、この五輪塔は油川城主であった奥瀬氏の墓であるという。
 油川城は浪岡御所の北畠氏の支配下にあっただろうと考えられている。北畠氏が油川湊によって交易を行なっていたからだ。ところが、この油川城は、油川大浜の町からいささか離れた場所にある。最近の研究では、この城は北方の民族との交易で儀礼に用いられたのではないか、と考えられるようになってきた。天正13年または18年(1585または1590年)、大浦右京亮(津軽為信)が攻めてきたとき、城主である奥瀬善九郎は南部氏の領地に逃れたという。


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 油川は、中世から続く「外ヶ浜」を代表する湊街である。浪岡の北畠氏の「御所」から大豆坂(まめざか)を越える街道も、この油川と堤へ抜けていた。江戸との交易のために東廻り航路の湊として青森が開かれたあとも、油川商人の力は衰えず、北前船が沖に停泊して荷を積み下ろしたと言う。
 近江などから来た油川の商人の多くは、浄土真宗の「有徳人」だった。法涼山円明寺と遍照山法源寺という浄土真宗の二つの寺が、中世の油川大浜にあった。いずれも弘前城下に遷され、いまは油川にない。このうち円明寺には、源義経の一行が落ち延びてきたという伝説があり、「弁慶の大般若経」や「弁慶の笈」が寺宝として伝わっている。
 いずれにせよ、浄土真宗の「有徳人」が核となった油川の湊町には、独特な自由と自律の空気があった。それは弘前藩にとっては、目障りなものだったに違いない。青森に湊を作って庇護するが、自立した商人の力は強い。北前船は、馴染みの商人がいる油川湊に入ってくる。油川は、列島の商人たちのネットワークのなかにあった。

羽州街道追分

●羽州街道追分
 羽州街道は、西田酒造の前で奥州街道(と松前街道)に合流する。江戸時代は、この先に湊役所までの道があった。油川大浜の湊は、油川川の河口にあった。

西田酒造

●西田酒造
 (綿屋)西田三郎右衛門は、油川後潟両組大庄屋である。ほかの多くの油川の商人と同じように、もともと近江の商人だったという。屋号から、北前船が上方から運んでくる綿や呉服などを商っていたものと思われる。津軽や南部の造り酒屋の多くは、このような商人から起こっている。造り酒屋としての創業は、明治11年(1878年)であった。「田酒」「喜久泉」を造る蔵元である。

西田酒造のこみせ

●「こみせ」
 西田酒造の店の前に「こみせ」が残っている。「こみせ」とは、商店が軒先を出し合って、雨風や雪を避けて歩けるようにした、アーケードである。「こみせ」は、弘前や黒石を始め、五所川原や木造など、津軽の町にはいたるところにあった。とくに、雪の降る季節には、まことに便利なものであった。しかし、町並みが近代化されて次々に消え、いまでは貴重な風景になっている。西田酒造の「こみせ」は、バス停がここにあることから椅子も置かれ、現在も昔ながらの機能を果たしている。

油川伝馬町

●伝馬町
 羽州街道が油川湊に入る手前に伝馬町がある。この伝馬町の先で、奥州街道と交叉している。浪岡から山越えした大豆坂街道の一方の分かれが、伝馬町に至る手前の新城で羽州街道に合流しているので、油川湊はどちらの街道からも荷が集まり、また運ばれていった。油川湊は安土桃山時代にはすでに賑わっていたと思われ、伝馬町は初めに出来た大浜の町のひとつである。

油川熊野宮

●油川熊野宮
 伝馬町にある油川熊野宮は「熊野山十二所権現」を祀る社で、宮司の澤田家に伝わる「由緒書」によれば、澤田家の初代は「大永のころ」(1521〜1527年)「西国辺りより当国へ」下り、二代目から神職を勤めている。「弘治のころ」(1555〜1557年)北畠家の祈願所となったと言う。


| 斎藤 博之 | [地域の社会史]円空 | 03:09 | trackbacks(0) | comments(0) |
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