ライター斎藤博之の仕事

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青森県の円空仏(4の2)松前街道〜蓬田正法院

正法院の円空仏(観音菩薩坐像)

正法院の円空仏

 松前街道を北へ。陸奥湾の浜辺に沿った街道を行く。日本海が列島の交通の表玄関だった時代、陸奥湾の湊は外側にあったことから、「外ヶ浜」と呼んでいた。その外ヶ浜伝いの街道に、老松の迫り出した寺がある。正法院。蓬田の円空仏は、この寺にある。

蓬田正法院

 蓬田の正法院にある円空仏は、かつては本堂の誰でも手を触れることが出来る場所にあったが、いまは内陣の裏手にしまわれていて、拝観を申し込めば出してくれる。観音菩薩であることを顕す頭の上の化仏はないが、蓮台を両手で捧げていることから観音菩薩と考えられている。瞳と白毫に円空自身の手で墨を入れたものと思われる。津軽地方の円空仏のなかでも、とりわけ穏やかな笑みを湛えている。
円空仏の拝観には事前申し込みが必要
(曹洞宗龍澤山正法院 0174-27-2012)


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 中世の外ヶ浜には内真部・潮潟・油川大浜・堤ヶ浦などの湊があって、街道を通じて安藤や北畠を支えていた。近世になると、外ヶ浜は弘前藩の領するところとなり、また北前の弁財船が登場して船も大型化すると、湊に求められる機能も変わってくる。近世の外ヶ浜には、弁財船の出入りする湊としては、蟹田・油川・青森などの湊があった。また、三厩・今別など津軽海峡を行き来する船が出入りする湊もあった。松前街道は、油川から北の湊や町を行く街道で、奥州街道として扱われることもある。

玉松台

●玉松台
 黒松の建ち並ぶこの丘の最も旧い老松は樹齢 300年と推定される。松は加賀・越中・越後の船が陸奥湾を行き来する際の目印に使われていた。また、松前公が参勤交代のおりに松の下で休んだとも言う。明治37年(1904)、日露戦争開戦に際し、在郷軍人68人がここで決起集会を開き、のちに戦没者の墓地を作った。

玉松

●鍛冶屋の一本松
 かつてこの周囲が低湿地の「潟」であったころ、千石船がこの松に艫綱を繋いだと言う。もともと「松田の鍛冶屋」のものだったことから、「鍛冶屋の一本松」と呼ばれていた。蟹田の湊には、鍛冶屋をはじめ、鉄に関わる職人が数多くいた。高岡(のちの弘前)の地に城を築くとき、城門に打った鉄も、蟹田で作られた。下北半島からも職人を呼び寄せ、蟹田で製鉄したと言う。

鍛冶屋の一本松

●蟹田川
 蟹田は、扁柏(ひば)を積み出す北前船の湊だった。砂鉄を産する浜もあったことから、製鉄も盛んで、造船も行なわれていた。蟹田川は今日より水嵩が多く、伐り出した扁柏を筏に組んで流していた。下流の小国に川湊があり、ここで小廻し船に積み替えた。製鉄も、江戸時代はこの辺りで行なわれていたようである。津軽半島を南北に走る中山山地は、下北半島と並ぶ扁柏(ひば)の産地で、日本三大美林のひとつに数えられている。山脈の西側で伐り出された扁柏は岩木川の船運を使って鰺ヶ沢から積み出されるが、外ヶ浜の材木を積み出したのは蟹田の湊である。雑木の森では白炭(しろずみ)を焼いていた。白炭は安定した高温となるので、鉄を鋳溶かすのに適していた。砂鉄があり、白炭があるので、製鉄が盛んだった。タタラばかりではなく、蟹田にはさまざまな職人や人足が集まってきた。船大工も多く、造船が行なわれていた。ここ蟹田では大坂鴻池の千石船を拵えていた。

蟹田川
| 斎藤 博之 | [地域の社会史]円空 | 14:21 | trackbacks(0) | comments(0) |
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