ライター斎藤博之の仕事

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奥大道と平泉(3−2)岩木山神社の舞楽面

 岩木山麓の百沢(弘前市岩木)にあるこの神社は、神仏分離以前は「百沢寺」と呼ばれていた。もともと中世のころは十腰内の巌鬼山神社の場所にあった。岩木山の北麓にあり、奥大道から日本海へ向かう脇街道に近い。この岩木山神社に、中世の舞楽面が7面遺されていることから、舞楽集団を伴っていたと考えるのが自然である。

採桑老

岩木山神社採桑老

 岩木山神社の舞楽面のなかで特徴的なのは、「採桑老」であろう。「採桑老」は、齢を重ねた最長老の舞人だけに舞うことが許される曲で、こんにちではめったに舞われることがない。岩木山神社では、この面を「神事面」とも言っており、神事に使ったものかもしれない。舞楽の面を神事に使うことも、東北らしい特徴である。

二の舞

岩木山神社二の舞腫面

 岩木山神社の「二の舞」は、「咲面」(えみめん)と「腫面」(はれめん)のうち、老爺の「咲面」がなく、老婆の「腫面」だけが残っている。もともとは「咲面」もあったのだろうと想像され、そうだとすれば「振鉾」(えんぶ)と「案摩」(あま)が舞われたに違いない。
 岩木山神社の舞楽面が、いずこからか伝来したばかりではなく、舞楽集団があって、舞を伴っていたであろうと想像できるのは、伝わっている面のすべてが扁柏(ひば)の木で作られているからである。扁柏を産するのは(のちの時代の)津軽と南部にあたる地域であることから、面が北東北で作られたことは間違いなく、面を彫る職人の集団が地域にいたということが、面を必要とする楽所(がくそ)がいくつもあったことを物語っているからである。


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散手と貴徳

岩木山神社散手 岩木山神社貴徳

 岩木山神社にも、左方の「散手」(さんじゅ)と、右方の「貴徳」(きとく)の面がある。とくに、この「貴徳」の、古風で、しかし東北的な顔立ちに特徴がある。

抜頭と還城楽

岩木山神社抜頭 岩木山神社還城楽

 この「還城楽」(げんじょうらく)は、頭と頬の片側だけが残っている。面の本体が失われているが、櫛引八幡宮(八戸市)の面と較べれば、頬が頭と一体になっているということに気づく。頭が動くという仕掛けが失われているかもしれない。

陵王

岩木山神社陵王

 この「陵王」は、頭の上の龍が欠けている。なかったのではなく、欠けてしまったのだ。この面の特徴は、顎の一部分が欠けてはいるものの、顎が面と離れているわけではなく、一体だということだ。大星神社(青森市)や櫛引八幡宮と較べれば、「動眼吊顎」の技術が失われていくことがわかる。


* 岩木山神社の舞楽面は宝物ですから、普段は展示されていません。


| 斎藤 博之 | [地域の社会史]奥大道と平泉 | 00:09 | trackbacks(0) | comments(0) |
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