ライター斎藤博之の仕事

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奥大道と平泉(3−4)櫛引八幡宮の舞楽面

 奥大道は平泉から北へ向かい、鹿角から津軽へ抜けて外ヶ浜へ至る道と、鹿角で別れて三戸から根城へ向かう道があり、この二つの道が青森の堤ヶ浦で合流していたと思われる。この南部糠部の道に、櫛引八幡宮(八戸市)がある。櫛引八幡宮に遺る舞楽面は9枚、その数は東北では天台寺(二戸市浄法寺)に次いで多く、大星神社(青森市)と同じ。本州の北端にありながら、大星神社と同じように旧い形式を保っているとともに、間違いなく美しい。

二の舞

櫛引八幡宮二の舞

 櫛引八幡宮の「二の舞」の面の特徴は、なんといっても、この笑顔である。老婆の「腫面」(はれめん)も、老爺の「咲面」(えみめん)も、じつに屈託なく笑っている。なんとも東北らしい笑みだが、「二の舞」の本質を顕しているのではないかとも思う。とくに、東日本を襲ったあの大震災のあとでは、なおのこと、東北人が生き抜いていく強さが、この笑みのなかに見出せるのではないか。

散手と貴徳

櫛引八幡宮散手1 櫛引八幡宮散手2 櫛引八幡宮貴徳

 「散手」(さんじゅ)が、櫛引八幡宮には2面あるのだが、そのいずれも、人懐っこい眼をしている。怒っているようにも、泣いているようにも見える。番舞(つがいまい)の「貴徳」(きとく)もあわせて、ほかにはない表情を持っていると言えよう。


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還城楽

櫛引八幡宮還城楽

 「還城楽」(げんじょうらく)がこれほど完全な姿で残っているのは、東北ではほかに例がない。顎が残っていないものの、頭と顎が面から独立して動く構造がよくわかる。奥大道の終点に、このように旧い様式の面が残っていることじたい、まことに面白い。それも、美しい姿を保っており、感動を禁じえない。

陵王と納曽利

櫛引八幡宮陵王 櫛引八幡宮納曽利

 「陵王」(りょうおう)も「納曽利」(なそり)も、顎を動かせば眼が動く「動眼吊顎」という仕掛けで、大星神社の面とともに、奥大道の北端に、旧い構造の面が残っていることがひとつのなぞと言えよう。とくに金色に輝く「陵王」が、じつに美しい。「陵王」の頭には龍があり、「納曽利」は龍の舞である。とくに天王寺の楽所(がくそ)の流れを汲む民俗芸能の舞楽では、「陵王」は「陽招き」の舞とも呼び、陽を浴びて金色に輝くという意味を持っている。

採桑老

櫛引八幡宮採桑老

 岩木山神社(弘前市岩木)とおなじく、櫛引八幡宮にも「採桑老」(さいそうろう)があり、神事の面とも伝えられてきた。何に用いられたか不明な面があることも、東北的な特徴である。


* 櫛引八幡宮の舞楽面は、櫛引八幡宮境内の国宝館に展示されています。


| 斎藤 博之 | [地域の社会史]奥大道と平泉 | 19:26 | trackbacks(0) | comments(0) |
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