ライター斎藤博之の仕事

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わたしにも被曝の症状

おととしの秋からことしの春にかけて、通算すれば100日を越える長期にわたって断続的に、福島県の取材をしてきました。現在、雑誌に連載されている漫画『美味しんぼ』の「福島県の真実」の案内をするためです。この取材から帰って暫らくすると、鼻血が止まらなくなるという事態に陥りました。

これは病院で止血剤をもらって止めましたが、「原因はわからない」と言われました。傷があるわけではなく、毛細血管が破れているらしいのです。わたしは高血圧なので、そのせいかと思って心配しましたが、医師のいわく、「もしも血圧が高くて血管が破れるとしても、その場所はここではない」と。薬でとりあえず止めたものの、湯に浸かったり、酒を飲んだりすれば、またとめどなく血が噴き出します。

さらに、ものすごく疲れが溜まって、体温が高いわけでもないのに躰が熱っぽく、考えることに集中できず、気力が失せて、睡眠時間は十分に足りているはずなのに一日中眠気を抑えることができず、取材などでわずかの時間でも外に出かけようものなら、数日は横になっていなければならないような状態でした。つい数日前までは、こんな按配だったのですが、いまは一日のうち数時間は起き上がって原稿を書いています。

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先日、福島県双葉町から埼玉県に避難しておられる方々のところへ取材に伺ったとき、放射線被曝の治療について研究しておられる専門家の方に、偶然お会いできました。たまたま雑談しているときに鼻血が止まらない話をしたら、「少し仕事をすれば疲れるということがないか」とお訊ねになるのです。まさにそのとおりなのだという説明をすると、ここに避難しておられる双葉町の方にも、そういう症状の方がおられる、ということです。福島県から避難されたのはおととしなのですが、このていどの日数を経ても、なお症状は残っている、のだそうです。病院では「原因はわからない」と言われた私の症状も、どうも被曝の典型的な症状らしいです。

いっしょに取材をしたメンバーの何人かも、わたしと同じような症状に陥りました。わたしたちに共通することは、原発事故の影響で、多少は放射線量の高くなっている地域で取材した、ということだけです。明らかに被曝の影響だと考えられるでしょう。言っておきますが、わたしが取材した場所は、原子力発電所の敷地の中などではなく、原発の立地地域でもなく、何の制限もなく人びとが普通に暮らしている場所でした。1μSv/hを超える地域に短時間(数時間)滞在したことはありますが、ほとんどはこれを下回る場所でした。

しかし、国が制限を設けていないこれらの地域も、本来は危険だとされている線量(0.14μSv/h以上)なのです。もちろん、同じ環境でもすべての人に同じように症状が現われるわけでもないでしょうし、福島県の各地も次第に線量は低下する傾向を示しています。その放射性物質も、伝統的な有機農法の作物には移行しにくく、じっさいに有機農法の農家のみなさんは、きちんと線量を計測した上で、検知されない作物だけを出荷しておられます。その作物を食べても危険はないはずです。それでも、ここに滞在することで、わたしのような症状に陥ることはあるのです。じっさいに住んでおられる方のなかに、こういう症状の方は多くいるはずです。報道されていないだけなのです。

原子力発電所の事故が現在も多くの人を危険に晒していることは、もっと知られて良いと思い、自分の症状について記事にしました。

| 斎藤 博之 | [日誌] | 22:50 | trackbacks(0) | comments(0) |
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