ライター斎藤博之の仕事

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青森県のラーメン(序)ラーメンは文化だ

日本人が「ラーメン」を食べるようになってから百年。この百年のあいだに、ラーメンはそれぞれの地域ごとに進化を遂げ、すっかり地域に馴染んだものに変化した。極言すれば、ラーメンは郷土の料理である。ここでは、それを「地場ラーメン」と呼ぶことにした。それは、地域の庶民が、作る者も食べる者もいっしょになってかたちづくった、地域の味である。東京のメディアは何か新しいものはないかと思って「ご当地ラーメン」を探す。だが、東京という単一の尺度で語られだした途端に、地域が百年かけてつくりあげてきた舌が失われるのを、われわれは目撃してきた。たとえば札幌で、あるいは函館で。ラーメンはもっと地味な、土着の食文化である。だから、それをメディアの手垢にまみれた言葉でわかった気になるのはやめよう。

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 中国には「ラーメン」という食べ物はない。さまざまな麺があるだけだ。いったい中国語では「麺」は小麦粉で作るものの全体を言い、そのなかには餃子や月餅も含まれる。わが国で初めて中華麺を商う店が現れたのは、横浜開港ののち。南京町(現在の山下町・横浜中華街)には中国人の経営する料理店ができた。初めは5軒だったらしい。どの店にもあった「湯麺」(タンメン)が、ラーメンの起源とされている。中華料理で使うガラスープに塩味をつけて麺を加えたものだ。中国伝来の蕎麦だから、「南京そば」と呼ばれるようになった。しかし、この南京そばは日本人にはあまり好まれなかった。

 南京町に料理店を開いた中国人の一人が、大正時代になって浅草に中華蕎麦の屋台を出した。その屋号は「柳麺」。「ラーメン」という呼び名の起源についてはさまざまな説があるが、この「柳麺」が訛って「ラーメン」になったとも言われている。

 「柳麺」が屋台を出す少し前の明治43年、同じ浅草に「未来軒」が開店した。この店が始めて、鰹節出汁で醤油味の中華蕎麦をつくった。鶏ガラに鰹節という和の素材を加えた出汁に醤油だれのスープ。麺は少し黒ずんだ細打(黒いのは衾を含んだ小麦をかん水を使わずに打っていたからである)。この「支那蕎麦」を売る屋台が、明治末から大正にかけて神奈川や東京にたくさん現れた。湯麺の面影はもうそこにはない。こうして、より日本人が好む「ラーメン」は生まれた。


 青森県にラーメン屋が登場するのは、大正から昭和の初頭にかけてだといわれている。全国のほかの地域と同じように、青森県でもこの時代ラーメンを商っていたのは中国人だった。東京浅草の屋台が鶏ガラに鰹節出汁だったのにたいし、青森県では鶏ガラと煮干で出汁をとった。ラーメンは、すでにその土地にある郷土料理の出汁を取り入れ、その土地ごとに変化していく。

 戦後になると、県内全域にラーメン屋が出現した。こうなると、青森県のなかでも地域ごとに異なるラーメンが生まれた。ラーメンが日本に現れておよそ百年、この間にそれぞれの土地が、それぞれの土地で好まれるラーメンを育ててきた。

 ラーメンという食べ物は、ごく日常的でありふれたものだけに、地域ごとの好みが現れる。それはひとつの文化だと言ってよい。麺の太さ、縮れ具合、出汁の材料、醤油か・塩か・味噌か、具は何を入れるか、そういったことどものひとつひとつにその土地ならではの嗜好がある。日本人がラーメンを食べ初めて高々百年ばかりのあいだに、われわれはこの食べ物を風土の味に加えたのだった。


 ブランドにはなっていなくても、その地域でラーメンと言えばこれ、というスタンダードが必ずある。ここではそれを「地場ラーメン」と呼ぶことにしよう。

 「地場ラーメン」は、その土地に固有な食材でスープをつくり、味付けや具もその郷土に馴染み深く、長いあいだその土地で食べられてきた。この特集では、青森県内のそれぞれの土地が育ててきたラーメンを浮き彫りにしよう。


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| 斎藤 博之 | [食の文化]ラーメン | 20:46 | trackbacks(0) | comments(1) |
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勉強になりました!

大阪に住んでいるのですが
大阪には「高井田系ラーメン」とよばれる
いわゆるご当地ラーメンはありますが
大阪の人間でも地元の人かラーメン好きしか
知りません。
 
しかし高井田系ラーメンの元祖の店も
戦後から始まり今も変わらず営業しています。
 
こうして「青森県のラーメン(序)ラーメンは文化だ」を
読むと、なかなかラーメンも奥深いものだなぁ。と
思いました。
 
長文乱文失礼しました。
また遊びに来させていただきます。
| 大阪 ラーメン | 2009/05/18 6:47 PM |










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