ライター斎藤博之の仕事

このウェブログは、フリーランス・ルポライター斎藤博之が地域限定の新聞・雑誌または非売品の媒体などに執筆した文章を、広くお読みいただくために、公開することを目的にしています。
斎藤博之は、祭りや民俗芸能・食文化・温泉文化・地域の社会史・地域づくりについて執筆しています。
<< 美味しんぼ塾 ラーメン会議 | main | 鯨餅〜北前船が運んだ食の文化(2)山形の鯨餅 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

sequel
| スポンサードリンク | - | | - | - |
鯨餅〜北前船が運んだ食の文化(1)

青森県や山形県に伝わる郷土の菓子「くじらもち」。じつはこの「くじらもち」、れっきとした京菓子なのである。「くじらもち」は北前船で伝わった食の文化のひとつなのだ。

(この文章は、『毎日新聞』青森県版で2006年12月に連載したものを、加筆訂正したものです)

sequel
青森県の鯨餅

鰺ヶ沢(青森県)では「鯨餅」と書き、山形県では「久持良餅」、浅虫(青森県)では「久慈良餅」の字を充てる。山形や青森では、よく知られた、郷土のお菓子であろう。この「くじらもち」を売る店が、鰺ヶ沢に2軒、浅虫に4軒、青森に1軒と、青森県だけでも8軒はある。じつはこの「くじらもち」、れっきとした京菓子なのである。

江戸時代の書物に、『古今名物御前菓子秘伝抄』というものがある。京の都を代表するこの当時の菓子の作り方を紹介したもので、そのなかに「鯨餅」も載っている。

「粳の上白米を一粒選りにして粉にし、絹篩を通し、粉一升に氷砂糖の粉二合(280g)を加え、湯でこね、羊羹を蒸すときのような箱のなかに一寸五分(4.5cm)ほどの厚さに伸(の)し、その上に、餡一升に葛粉二合(230g)を混ぜたものを厚さ四分(1.2cm)に伸し重ねて黒みを添え、蒸籠で蒸し、四時間ほど冷ましていろいろの形に切る」

これが江戸時代の京の「鯨餅」で、うるち米の上白粉・氷砂糖の粉・餡・葛粉で出来ていた。こんにちの「くじらもち」とは少し様子が違うようで、ようするに白と黒の二層になった棹物である。その断面を見れば、黒い皮の下に白く厚い脂肪のある鯨の皮の断面に良く似ていた。「鯨餅」という名前の謂れは、その形状にあった。

この時代の「鯨餅」には、黒黄白の三層にするものもあったらしい。黄色を何によって出すかは、書物には書かれていない。また、断面が富士山に見えるように作るやり方もあった。「富士鯨」と言う。

いつの間にか、京都ではこの「鯨餅」を作ることが少なくなったようである。むしろ、地方に伝わって、この菓子は生き延びることが出来た。いまでも山形県や青森県で、「くじらもち」が盛んに作られている。おそらく、北前船で伝えられた食の文化であろう。

そう思ってあらためてこの菓子を口にすると、先ほどまでは田舎の菓子だと思っていたものが、上品な味わいにも感じられる。文献に見る「鯨餅」とは少しずつ形を変えながら伝わってきた。その土地に根付き、その土地の味わいを加えた。鄙びていながらも雅である。洗練されていながら、風土を感じさせる。「くじらもち」は、そういうお菓子なのだ。

| 斎藤 博之 | [食の文化]郷土料理(鯨餅) | 12:03 | trackbacks(5) | comments(4) |
スポンサーサイト
sequel
| スポンサードリンク | - | 12:03 | - | - |
trackback
http://hsaitoh.jugem.jp/trackback/27
浅虫温泉の久慈良餅
浅虫温泉の久慈良餅をご存知でしょうか。 原材料は米と小豆と砂糖と水飴、食塩、クルミです。 もちもちした非常に美味しいお菓子です。 飯田橋のあおもり北彩館で売っています。 ゆべしとモチモチ感は煮ていますが、 醤油は使っていませんから味も香も全く違って、 非常
| うっぴっぴっ | 2007/02/12 6:25 PM |
八戸の鯨餅
八戸にも鯨餅があることを知りました。 八色センターで売っていたので、早速購入してみました。 (画像1「八戸の鯨餅」包み紙) 包み紙には、「港名産 八戸太郎 鯨餅」と書かれています。 製造元は、八戸市小中野の「御菓子処ちぐさ」。 原料は、「う
| ライター斎藤博之の取材日記 | 2007/09/10 11:14 PM |
『中林20系の中林20系的こころ』クジラについて考える~今日は『くじらもち』
素晴らしい研究ですね。“なぜ鯨餅と云う名前なのか?”と云う長年の謎が解けました。参考にさせて戴きました。
| さてと…めしにするか | 2009/02/18 2:04 PM |
浅虫温泉銘菓 永井の久慈良餅
どこがクジラなんだ? 「永井久慈良餅店」の“久慈良餅(くじらもち)” お風呂は好
| とべないとりのおいしいBlog | 2009/11/19 6:04 PM |
「くじらもち」を食べる
※「鯨」は入っていません。
| Camellia日和 | 2010/10/13 4:54 AM |
comments
気になったこと、形を違っていても岐阜県、恵那、中津川市で「からすみ」という名前の和菓子があります。
食材も食感も同じと思います。
| 森正明 | 2008/08/19 6:56 AM |
http://www.marugoto.cc/densetu/oyakokujira.html

南の地、宮崎にも【鯨餅】がありました、、、
黄色い線は【くちなしの実】の記載があります。

柳田国男の【蝸牛考】と同じく、食材文化も言葉と同じく
北へ、南へと分布して行ったのでしょう。

以上 ご参考までに
| ホンズ | 2009/02/12 12:54 PM |
鯨餅 調査その2

東北以外の【鯨餅】を調べてみたところ

http://www.geocities.jp/na_119/wagashi2.html
●御前菓子をつくろう―江戸の名著「古今名物御前菓子秘伝抄」より (大型本)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4315517046/mandmadedairy-22/250-7248772-4745059?%5Fencoding=UTF8&camp=247&link%5Fcode=xm2
現代語訳 26ページ参照。江戸前期に流行した鯨の皮の断面に
見立てたお菓子だそうです。ういろうの上に羊羹が乗っているようなお菓子です。

【尾道】
鯨餅は鯨の黒色の表皮肌と白い肉質とを表現した竿物羊羹で、
昆布と寒天でつくった黒味の鯨皮の部分と、もち米からつくる
道明寺粉と砂糖でつくった白い肉質の部分からなっている。
清涼感をもっており、お茶会の菓子として喜ばれるであろう。
これまでは尾道に一軒つくっていた店があったが、今は閉め
ているという。手に入らないと聞かされて一層、欲しくなった。
http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/fukuyama-museum/hitorigoto/032.html

●尾道銘菓 『鯨羊羹』  (写真あり)

http://www.nakaya-honpo.com/syohin_f/item_f/kujira.html

http://219.121.16.30/blog/archives/001063.html

●大阪天満天神菜種の御供鯨餅

http://ningyodo.library.pref.osaka.jp/cgi-bin/work.cgi

●九州 宮崎の民話より

http://www.marugoto.cc/densetu/oyakokujira.html

こうして眺めますと南は 大阪、尾道、九州と伝わった料理との印象ですが、、、

以上 ホンズ
| ホンズ | 2009/02/12 5:37 PM |
みなさん、情報をお寄せいただき、
ありがとうございます。

ボンズさんがご指摘の宮崎県日南市の鯨餅は、
わたしも知りませんでした。
同じ宮崎県の佐土原町(宮崎市)の鯨羊羹に
似ているのでしょうか?

BLUE SAPPHIRE さんのページ
http://d.hatena.ne.jp/bluesapphire/20090213/1234489261
で、わたしの記事にも触れながら
「くじらもち」の紹介がされています。

| 斎藤博之 | 2009/03/05 9:04 PM |










+ CONTENTS of THIS WEBLOG
+ PROFILE of SAITOH
+ OTHER WEBSITE written by SAITOH
+ SAITOH'S DIARY

(1)
斎藤博之のTwitter
斎藤博之のTwitter

    follow me on Twitter

    (2)
    ライター斎藤博之の取材日記
    ライター斎藤博之の取材日記
    (ライター斎藤博之が日々取材で出会った食べ物や祭り・風景を紹介する日記。
     Twitter開設以前に作っていたもので、現在は更新していません)

    + FORUM
    ライター斎藤博之のフォーラム (記事内容に関連した討論や、質問を受け付ける掲示板)
    + MESSAGE FORM
    + COPYRIGHTS
    著作権は、斎藤博之にあります。文章の引用は自由ですが、著作権法の定めるところに従ってください。ウェブ上で引用する際も、出典を明示したうえで、トラックバックするか、著者に連絡してください。当然のことながら、著作権を侵害していると認められるものについては、法的な対抗手段をとることがあります。
    + selected entries
    + recent trackback
    + recent comments
    • 恐山信仰とイタコについてのQ&A
      斎藤 博之 (03/27)
    • 恐山信仰とイタコについてのQ&A
      田中 修 (03/17)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      Botox (12/26)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      高橋靖司 (07/17)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      タコ (06/12)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      KAZU (06/01)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/22)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      ana (05/22)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/21)
    • 原発の事故による健康被害について〜美味しんぼ 福島の真実
      斎藤 博之 (05/21)
    + archives
    + LINKS

    雁屋哲の美味しんぼ日記
    (雁屋哲さんの公式ホームページです)

    美味しんぼ塾ストーリーブログ
    (『美味しんぼ』全巻のあらすじを検索)

    企画集団ぷりずむ
    (雑誌にラーメン特集などを執筆しました)

    グラフ青森
    (雑誌に民俗芸能・地酒などの連載をしました)

    まるごと青森
    (青森県の観光担当職員たちで作るブログです)

    恐山あれこれ日記
    (恐山菩提寺の院代・南さんの日記です)

    山の楽校「焼き畑日記」
    (八戸市南郷区で焼畑を復活しました)

    トキワ養鶏
    (耕畜連携の循環型農業に取り組んでいます)

    レストラン山崎
    (弘前のスローフードの仲間です)

    洋望荘
    (八戸の自然食・スローライフの宿です)

    仙台ラーメン金太郎
    (コンセプトと食材を担当しました)

    仙台屋
    (食材と地酒を集めました)

    深浦の食べ物屋セーリング
    (深浦の正直な食べ物屋さんです)

    青森県のラーメン・旅の宿と温泉
    (T.KENさんのホームページ)

    あおもりラーメン協会
    (あおもりラーメン協会の公式サイト)

    新井由己の仕事帖
    (地域のおでんやハンバーガーなどについて
     食文化として研究しておられます)

    わ的には 「北の国」のチョット南から
    (青森などを歴史も交えて探訪する
     ぴかりんさんのカナリ楽しいページです)

    大川平の荒馬
    (「大川平の荒馬」のホームページです)

    べんべのけやぐ
    (「大川平の荒馬」のメンバーです)

    じっくり・ゆっくり・2
    (「大川平の荒馬」のひろさんです)

    我、旅の求道者也
    (「大川平の荒馬」で知り合いました)

    下田ゆうじの津軽お祭道中
    (懇意にしている鳥井野獅子踊りの若手後継者、
     下田ゆうじさんが津軽の民俗文化を語る)

    小竹勇生山の瞽女宿
    (津軽三味線と越後瞽女を取材しました)

    津軽の侫武多
    (斎藤の作ったネブタ分布データを共有)

    阿部かなえの二胡のページ
    (北東北初の二胡の教室を開いた方です)

    憩いの森メーリングリスト
    (東北の魅力に触れるメーリングリスト)

    くぼた屋ウェブログ
    (岩手県滝沢村とゲームについての話題)

    土徳の世界
    (映像作家・青原さとしさんの公式サイト)

    藝州かやぶき紀行
    (広島の萱葺き職人を追うドキュメント)

    よたよたあひる's HOMEPAGE
    (ちょっとオタクな友人です)


    にほんブログ村
    このウェブログは、「にほんブログ村」に参加しています。

    + RSS
    + RECOMMEND
    美味しんぼ 108 (ビッグ コミックス)
    美味しんぼ 108 (ビッグ コミックス) (JUGEMレビュー »)
    雁屋 哲,花咲 アキラ
    「美味しんぼ」が、東日本大震災の被災地のうち、八戸(青森県)から石巻(宮城県)までの三陸地方を訪ねた。津波は、あらゆるものを流し去ってしまったけれど、清らかな海を護ろうとしていた重茂(岩手県宮古市)や唐桑(宮城県気仙沼市)には、生き物も還ってきた。陸前高田(岩手県)の醤油屋さんは、市民ファンドの援けも得て、新たな一歩を踏み出そうとしている。まっとうな食べ物を作っていた生産者たちは、どのように復興に取り組もうとしているのか。豊かな自然と、温かな絆をもったこの東北に、ほんとうの幸せがあったのではないか。わたくし斎藤博之が案内します。
    + RECOMMEND
    美味しんぼ 100 (100) (ビッグコミックス)
    美味しんぼ 100 (100) (ビッグコミックス) (JUGEMレビュー »)
    雁屋 哲
    わたくし斎藤博之が案内人として登場する『美味しんぼ』の「日本全県味巡り 青森県編」。三方を海に囲まれ、ブナやヒバの森に抱かれた青森県は、海と山の豊かな恵みを受けているばかりではなく、醗酵・粉食・天日干し・寒干しなど、食べ物を保存し・しかも美味しくいただく知恵を、幾百年の年月をかけて蓄積してきた。また、北前船で伝わった文化と北方の民俗が交叉し、旧い日本の食文化の基層を留めてもいる。
    + RECOMMEND
    日常生活のなかの禅―修行のすすめ
    日常生活のなかの禅―修行のすすめ (JUGEMレビュー »)
    南 直哉
    恐山菩提寺の院代・南直哉師は、曹洞宗大本山永平寺で長く修行され、曹洞宗を代表する論僧である。
    この著作は、「私」という存在の根拠への問いから始まり、他者との関係のなかに「生」を見出し、もう一度自己を再構築するための「禅」を説く。
    大乗仏教の根本思想を、恐山の禅僧が語る。
    + RECOMMEND
    「問い」から始まる仏教―「私」を探る自己との対話
    「問い」から始まる仏教―「私」を探る自己との対話 (JUGEMレビュー »)
    南 直哉
    恐山菩提寺の院代・南直哉師は、曹洞宗大本山永平寺で長く修行され、曹洞宗を代表する論僧である。
    この著作は、「私」という存在の根拠への問いから始まり、他者との関係のなかに「生」を見出し、もう一度自己を再構築するための「禅」を説く。
    大乗仏教の根本思想を、恐山の禅僧が語る。


    + sponsored links