ライター斎藤博之の仕事

このウェブログは、フリーランス・ルポライター斎藤博之が地域限定の新聞・雑誌または非売品の媒体などに執筆した文章を、広くお読みいただくために、公開することを目的にしています。
斎藤博之は、祭りや民俗芸能・食文化・温泉文化・地域の社会史・地域づくりについて執筆しています。
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エフエム青森 AOMORISM

 エフエム青森が2008年に開局20周年を記念して始めた生放送の討論番組「AOMORISM」の公開放送が、2回目の今年は2月11日に「古牧温泉 青森屋」で行なわれました。わたしもパネラーの一人として参加しました。

パネラーは、
・若山多香子(フリーアナウンサー。青森県出身で東京在住)
・角田 周(「地吹雪ツアー」の仕掛け人。旧金木町在住)
・佐藤大介(「古牧温泉 青森屋」総支配人)
・島 康子(まちおこしゲリラ「あおぞら組」組長。大間町在住)
・宮 桂子(横浜町菜の花トラスト代表。横浜町在住)
・斎藤博之(フリーランス・ルポライター)

 エフエム青森が作った企画書から、番組の趣旨を紹介しましょう。「 総じてあらゆる指標の全国平均を下回っている青森県。卑下して未来に不安を募らせるよりも、青森県の良いところを再認識・再確認して前向きに頑張る…事にしませんか!我々が知らない『世界に誇れるNo.1』が青森には沢山あるのです。それに気づいて既に新しい取り組みに着手している人たちもいます。ネガティブに捉えがちな青森像をポジティブに変換!そこで、青森県を真剣に考える論客たちが膝詰めで徹底討論!『今の青森県、なんとかならないのか!』『発展する余地・ヒントはどこにあるのか!』徹底的に追求していきます」。

 放送は3時間に及び、観光と産業、食と農、祭りと文化、などについて議論しました。


エフエム青森のサイトもご覧ください。

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番組で言い足りなかったことも含めて、わたしの主張を書いておきます。


 アメリカ合衆国を震源とする世界恐慌は、日本に重大な経済危機をもたらしている。それでなくとも失業率の高い青森県では、有力な企業の倒産や進出企業の撤退なども相次ぎ、地域経済の悪化が家庭の生活にも重大な影響を与えている。

 この世界恐慌は、かつての日本の「バブル経済」と同じく、見せ掛け上膨らんだ資本が信用投機によってさらに膨張する、という実態のない信用膨張が破綻したものだ。見せ掛けだけの資本が求めた投機先はバイオ・エタノールの原料となる穀物(とうもろこしなど)に及んで食糧の需給を逼迫させもし、最終的には土地に殺到して合衆国民の生活を破綻させることとなった。

 彼の国ではオバマ氏が「change」を叫んで大統領となった。その変革がどこへ行こうとしているのかはまだわからないが、何ごとも市場に任せておけば経済は成長して豊かになる、という価値観は間違っていたと主張している。少なくとも、合衆国は価値観の転換を始めようとはしている。

 翻って、経済的には疲弊して見える地域社会は、ほんとうに「貧しい」のだろうか。昨年の晩秋、下北半島は脇野沢の九艘泊という集落を取材したことがある(「忘れられた日本」)。そこでは、人びとは贈り物をし、また贈り物をされて暮らしていた。暮らしのなかの少なくとも食べていくという部分にかんしては、貨幣を媒介にした経済の外側で、むらびとたちは豊かに生きていた。経済的に富を得ることが必ずしも豊かさではないということに、地域社会を見ることで気付かせられる。

 世界の隅々まで経済が覆い尽くしてしまったかのように見えても、豊かさの尺度はひとつではない。価値の基準は多様である。社会が豊かになるために何が必要なのか、現代社会が価値観を転換していくためのヒントは、地域社会のなかにある。だから先ず、自分たちの地域について再発見していくこと、そこから始めよう。

 大都市にはどんなに望んでも生まれようがなく、しかし田舎にはごく当たり前にあるもの。青森県にはそういうものがたくさんある。饗えこそは社会を再生する力なのだ。


 ところで、会場となった「古牧温泉 青森屋」は、一度倒産した温泉旅館を再生しようと取り組んでいる施設です。従業員が討論を重ね、見出したスローガンは「のれそれ青森」(とことん青森)。祭りや食べ物を中心に地域のものを活かして、見世物小屋のような空間を演出しています。食べ物にしても、変にいじらず、食材の持つ旨味を引き出そうとしています。地域で何か始めようとするとき、この姿勢は参考になるだろうと思います。地域が持っている資源を妙にデコレーションして、たいていの場合は失敗するのです。徹底的に青森にこだわったからには、小細工はせず、素材を後押ししてあげるだけ。そういう意識を共有できれば、古牧温泉青森屋の従業員のように、働く人の顔が活き活きしてくるでしょう。

 青森県の地酒が40種類も置いてあり、そのひとつひとつについて、どんな特徴があり、どんな料理に合うか、メニューに説明しているような飲食店は、この古牧温泉青森屋の新しいバイキングレストランをおいて他にありません。

 総料理長は、わたしがコーディネートした『美味しんぼ 青森県編』を読んで勉強してくれているそうです。素材の味を覆い隠すような味付けはしないという精神は、道元が『典座教訓』(てんぞきょうくん)で説いた「三徳六味」に通じるものです。人間の舌には甘辛塩酸苦の五つの味を感じる味蕾がありますが、道元は六番目の、最も重要な味があると言いました。淡です。食べ物が持つほんらいの味をわかるようにするということです。そのようにして初めて、食べ物を作る人と頂く人の心が通い合うのです。どんなグルメも、心のこもったもてなしには適いません。料理人が技でねじ伏せるのではなく、食材を作った人・料理を作った人の顔と心を伝えるようにすることが大切なのです。新しい古牧温泉は、料理のすべてが郷土料理ではありませんが、郷土料理を食べたい人も、他の料理を食べたい人も、青森の食材がどのように美味しいか感じ取れるように、心を配っていました。

*「古牧温泉 青森屋」のサイトもご覧ください。


*討論の司会進行役を務めた若山多香子さんが、
 当日の一般来場者が番組を紹介しているサイトを見つけてくれました。
   日和写真なブログ
 ラジオ放送では伝わらなかった公開生放送の会場の雰囲気がわります。

| 斎藤 博之 | [地域づくり] | 02:53 | trackbacks(0) | comments(2) |
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comments
こんばんわ
私のブログにトラックバック頂き有難うございます。
当日ラジオを聴いていて、偶然三沢市付近に居たもので行ってみました。
私も、自分のブログで青森を紹介して一人でも多くの方に青森の良さを分かって頂けたらと思って日々更新しています。
私に出来る事はこんな事ですが、一人一人の出来る事から青森をアピール出来たらと思い続けています。
青森は本当に良い所だと思います。
その良さをこれからも私自身発見して紹介して行きたいです。
これからも宜しくお願いします。
| フィールダー | 2009/02/28 11:11 PM |
フィールダーさん、コメントありがとうございます。
勝手ながら、トラックバックさせていただきました。
ラジオの公開討論の会場に足を運んでくださった上、
ブログで記事にしていただき、嬉しく思います。
これからもよろしくお付き合いください。
| 斎藤博之 | 2009/03/05 9:23 PM |










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